2005年度 社会福祉特別講義II(後期)


授業の概要:


 ある日突然事故などにより、それまでは普通に暮らしていた人が身体に障害を持ってしまう事を中途障害という。 その中途障害の中でも、身体の四肢(上肢や下肢、体幹)にまひが生じる頚髄損傷(頚部脊髄損傷)とは、交通事故やスポーツにより 頚部に過度な力が加わり、頚椎の骨折や脱臼によるうっ血などにより、脊髄節が圧迫され、最終的には神経としての機能を失うことにより、 四肢の運動と、感覚を永久に喪失することである。そのような障害のある人たちが、受傷前後の生活がどのように変化し、 その後の生活や人生において、何をもたらしたのかなどについて、多方面において活躍されている当事者(頚髄損傷による四肢まひ者)から 直接お話を伺い、社会福祉が彼らに対してできる事とできない事、さらにはどのような支援や、社会資源が必要なのか、などについて考える 機会を持ちたい。

講義を受ける前の準備(事前学習):

事前に学んでおくべき内容(キーワード)は以下のとおりである。
  • 身体障害者
  • 中途障害
  • 脊髄損傷(頚髄損傷)
  • 自立生活(自立生活運動)

    特別講義におけるテーマと授業概要

  • 「頚随損傷による四肢まひ」〜それぞれの自己実現と必要な社会資源〜
    1. 10/12 講師1  磯部浩司 (いそべこうじ) さん(有限会社JIRITAMA 代表取締役)
      • 頚随損傷による四肢まひ
        1. 私の障害について
        2. 受傷前と受傷後 〜何が変わったのか〜
        3. ターニングポイント
        4. 模索と挫折
        5. 人に歴史あり!障害者に歴史あり!
        6. とにかく実行
        7. 社会福祉(支援・資源)に必要なこと
        8. 社会福祉の問題・課題
        9. 障害当事者として
      • 課題レポートの内容
        • ひとり暮らしに興味を持っている、あるいは、持ち始めた頚髄損傷者に対して、 必要と思われる制度を3つ調査する。この場合、3年以上の慢性期とする。 また、制度の合理性と矛盾点の分析をする。

    2. 10/26 講師2  小濱洋央 (こはまあきひさ) さん(独立行政法人理化学研究所 先任研究員)
      • 公共交通あれこれ
        1. はじめに
        2. 受傷前後の生活の変化
        3. 研究する生活 〜専門は理論核物理
        4. 公共交通あれこれ 〜新幹線、航空機、在来線、リフト付きタクシー
        5. まとめ
      • 課題レポートの内容
        • あなたの住んでいる自治体(例えば上田市)が提供している移動に関する福祉サービスを調べ、 制度の一覧表を作ってください。その際、サービス内容、対象者、利用法、実施主体、手続き窓口、利用に関わる制限 (利用回数、所得制限の有無など)などを明らかにしてください。
        • 調べた制度の中に、リフト付きタクシーなど車いすに乗ったまま乗り込める車両を使った移送サービスはありますか。 もしあれば、運行する会社をそれぞれの利用料金とともに一覧にまとめてください。もしなければ、代替できる制度がないか、 役所に問い合わせてみてください。また、市内にリフト付きタクシーなど車いすに乗ったまま乗り込める車両を運行している 会社があるかどうか調べてください。
        • ここで調べた移動に関する福祉サービスで、あなたが足りないと考えるサービスを具体的に企画・立案してみてください。

    3. 11/09 講師3  金子 寿 (こねこひさし) さん(F.L.C.(Friendly Life Community)代表)
      • セルフヘルプグループとピアサポートの重要性
        1. 頚髄損傷とは
        2. 福祉機器の利用と住環境の工夫
        3. 公共交通の利用
        4. 神奈川リハセンターを退院して在宅生活をスタートした頃
        5. 病院に入院中に一緒だった仲間達
        6. かながわ・ゆめ国体(平成10年)に参加して
        7. FLC(Friendly Life Community)
        8. ピアサポートとは
        9. 自立生活支援
      • 課題レポートの内容
        • 頸髄損傷者が地域で暮らすためには、どのような社会資源の活用が考えられるか?
        • 頸髄損傷者が地域で暮らしたり、社会参加すために必要な情報を得るためには、どのような手段が考えられるか?(複数の手段)

    4. 11/30 講師4  南 浩一 (みなみこういち) さん(パラリンピック アーチェリーメダリスト)
      • 中途障害としての頚髄損傷
        1. 生い立ち
        2. ハングライダー
        3. 事故で頚髄損傷
        4. 絵を描く〜コンピュータグラフィックス
        5. 東京オリンピック・マラソンランナーのアベベが頚損に
        6. アーチェリーとの出会い
        7. バルセロナ・パラリンピックでアーチェリー(個人)金メダルを獲得
        8. アテネ・パラリンピックでアーチェリー(団体)銀メダルを獲得
      • 課題レポートの内容
        • 障害を受けた方々に、どのような姿勢でのぞまれますか?
          1. 受傷あるいは発病間もない時期の方々に接する時は・・・
          2. 受傷あるいは発病後、何年か経過している方々に接する時は・・

    5. 12/14 講師5  内山幸久 (うちやまゆきひさ) さん(日本テレビ放送網株式会社 嘱託社員)
      • 頚髄損傷による四肢まひ
        1. ハートビル法と介助方法
        2. 公共交通機関の割引制度
        3. 電車に乗り込む時の工夫
        4. 情報バリアフリー化支援事業
        5. パソコンの操作
        6. 特殊入力装置
        7. バリアフリー住宅(自宅)
      • 課題レポートの内容
        • 次の1または2の題材を選び、レポートを書きなさい。その際、直接支援と間接支援というキーワードを使用しなさい。
          1. 障害者の離職問題について調べ、あなたの考えと望まれる社会資源について書きなさい。
          2. まず、客観的な視点から少し離れてください。あなたもしくはあなたのごく親しい友人が、C4レベルの頸椎損傷になったとします。すでに受傷後3カ月を経過していて、障害は全麻痺のまま、医師からの告知はまだありません。両親や兄弟は、日々の介護に追われ体力と知力の限界にきているとします。そこであなたが今何をすべきか、障害当事者本人の立場または障害を持ってしまった友人のために何ができるか、何れかの立場で検討してみてください。

    6. 01/18 講師6  藤井由布子 (ふじいゆうこ) さん(東京学芸大学大学院博士課程在学中)
      • 頚随損傷による四肢まひ
        1. 頚髄損傷受傷時
        2. リハビリテーション
        3. 中学復学
        4. 高等学校入学、サッカー部員のボランティアに支えられて
        5. 大学入学、キャンパス内の移動は自立
        6. 大学院修士課程進学、定期券を利用!
        7. 大学院博士課程の今!
      • 課題レポートの内容
        • 障害理解と障害者理解の違いについて言葉から受ける意味や印象から、なるべく具体的な例を用いて、記述して下さい。
          • キーワード:QOL,接客(遇),ハード面とソフト面,心のバリアフリー,当事者参加


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