カリフォルニア便り・番外編

サンフランシスコ&シリコンバレーの
リハビリテーション工学関連機関訪問(1)

スタンフォード大学CSLI, Visiting Scholar 伊藤英一


パロアルト・VAリハビリテーション研究開発センター
VA Rehabilitation Research and Development Center


 スタンフォード大学のとなりに位置するパロアルトVAメディカルセンターの中に、リハビリテーション研究開発(RR&D)センターがあります。CSLIからは反対側になるため、隣と言っても車で10分ほどかかります。このRR&Dセンターでは運動分析に基づいた訓練装置の開発から人工関節などの評価試験、障害者の生活支援装置、特殊車いす、コミュニケーション支援装置などの研究開発を行っています。ここの研究スタッフは工学のみならず、医学、生理学、社会学、PT、OT等複数の分野から集められています。また、専任のスタッフ(約20名)以外に、メディカルセンター内(病院)やスタンフォード大学工学部機械工学科の教授陣、大学院生等の非常勤職員やインターン等を含めて総勢約50名が研究を行っています。

 研究費の捻出はどこも大変らしく、VA独自の研究費は多くないようです。そのため、リハビリテーションや障害者支援のための基礎技術をうまく生かした研究テーマを作り、民間や連邦、NASAなどとの共同研究を展開しています。(重力?!を可変できる歩行補助装置は、宇宙空間での筋力トレーニング装置へ応用できるためNASAとの共同研究)また、技術移転に関しても専任のセクションやスタッフがRR&Dの新技術を民間に橋渡しをして、早いサイクルでの製品化を実現しています。

 今回の訪問は1988年新横浜で開催されたリハビリテーション工学国際セミナーにおいて、David L. Jaffe氏(写真:頭部制御式電動車いすのデモンストレータ)の講演論文を和訳し、それ以来情報交換をして来た事もあり、大変多忙であったにもかかわらず快く引き受けていただき実現しました。



頭部制御(超音波)式電動車いす  Ultrasonic Head Control Wheelchair

 神奈川リハセンターでも試作した頭部制御式電動車いすと同等のもの。しかし、これはすでに製品となっている。頭を前に傾けると前進、左に傾けて左旋回、右に傾けて右旋回、後ろに傾けると後退するというもの。



盲聾者用指点字ディスプレイ

 盲聾者のコミュニケーション手段は、相手の手を触りながらその形で判断します。そのため、指点字がわかる人との一対一でのコミュニケーションしかできません。そこで指点字がわからない人からの言葉や通信のために利用するための、文字を指点字にする手のロボットです。



頚髄損傷者の生活支援ロボット

 ロボットアームを音声認識と組み合わせた環境制御装置の一種。飲み物を出したり、CDなどを交換することができる。



重力可変(!)型トレッドミル(垂直方向に体を押し付ける力を発生させる装置)

 左の半球ドームが原形機。半球ドームの中に腰から下の部分をいれて、中のトレッドミルを歩く。半球ドームの内圧を大気圧より高くすると体が外へ押し出される力が働き免荷され、減圧すると中に吸い込まれるため加重される。中、右は免荷専用(風船)タイプ。



左:ハンドル旋回測定装置(神奈川リハにもあります)
中:バーチャルリアリティの訓練への応用
右:全方向移動可能車いすのタイヤ部分


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September 16th, 1998
伊藤英一 Eiichi ITO [ ito@csli.stanford.edu ]
Visiting Scholar, The Archimedes Project
CSLI Stanford University